2010年12月30日木曜日

悲報 上杉アンプ

遅ればせながら年賀状を書いていたら、哀しい知らせが届いた。上杉アンプの上杉佳郎さんの葬儀を記した奥様からの手紙だった。
タンノイのウエストミンスターを購入したとき、ショップで推薦されたのが上杉アンプだった。なんの変哲もない派手さのないアンプ。当時このアンプを知らなかった僕は、なぜお店のひとがそんなにも推薦するのかわからなかったが、家でエージングの一ヶ月が過ぎた頃からそのアンプのマッチングのよさがわかってきた。
タンノイのタンノイらしい、あたたかさが見事に奏でられるのだ。すっかりファンになった。
それから数年して、ご自宅を訪ねて取材をする機会をえた。きさくな方だった。大震災で大変な目にあったけれど・・といいながらもみせてくれた倉庫には、山積みの真空管のストックと、見事に整理されて大切に保存されている雑誌の数々だった。そこの片隅に、五味 康祐の「オーディオ巡礼」の初版をみつけたときには、なるほどと思ったりもした。
ステレオサウンドの最新号に、上杉さんの姿はなく心配していたのだけれど、こんなことになるとは、想像もしなかった。いま、そんなことを知りもしない僕の上杉アンプはいつものように、タンノイを見事に奏でている。それゆえに悲しみはさらに深い。

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2010年12月27日月曜日

Q:Soul Bossa Nostra Quincy Jones ~クインシー、久々のアルバムは最高傑作

聴いてみて、何と完成度の高いアルバムと思わずうなってしまう出来です。クインシー待望のアルバム。


Q:Soul Bossa Nostra

Quincy Jones


1. Ironside feat Talib Kwali
2. Strawberry Letter 23 feat Akon
3. Soul Bossa Nostra feat Ludacris, Naturally 7, Rudy Currence
4. Give Me the Night feat Jamie Foxx
5. Tomorrow feat John Legend
6. You Put a Move on my heart feat Jennifer Hudson
7. Get the Funk out of my face feat Snoop Dogg
8. Secret Garden feat Usher, LL Cool J, Robin Thicke, Tyrese, Barry White, Tevin Campbell
9. Betcha wouldn’t hurt me feat Mary J Blige, Q-Tip, Alfredo Rodriguez
10. Everything Must Change feat BeBe Winans
11. Many Rains Ago (Oluwa) feat Wyclef Jean
12. PYT feat T-Pain and Robin Thicke
13. It’s my Party feat Amy Winehouse
14. Hikky-Burr feat Three 6 Mafia and David Banner
15. Sanford & Son feat T.I., B.o.B, Prince Charlez, Mohombi

曲それぞれの完成度もさることながら、あいかわらず、録音、ミックスのありようが尋常ではない完成度。最近のクインシーというよりは、かつてのあの 名作「back on the block」を彷彿とさせる感じす。なつかしい「ironside」 も、アルバムタイトル曲の「Soul Bossa Nostra」も、そしてバック・オン・ザ・ブロックからの「Tomoorow」「secret garden」も、もちろんアレンジは最新の音楽シーンを感じさせるものなのだけれど、和声とリズムのクールなミクスチャー感がこれがたまらなくクイン シーなのですね。


年末に登場した、今年一番のひとつとも思わせる素晴らしいアルバムです。

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2010年12月21日火曜日

鎌倉芸術館 矢野顕子の夜 ジャズ 天才 オンリーワン

鎌倉芸術館小ホールで、矢野顕子さんのリサイタルをみた。
天才ということばを軽々に使うのは、僕の流儀には反するが、彼女を聴くたびに、特にソロをきくたびに、まっさきにこのことばが浮かんでくる。すべてが「自由自在」。ピアノが何のフリクションもなくひかれ、自由に声がその上で踊り、そして音楽としてのグルーブ感があふれる。
それでいてある種の再現性があるのだ。この「再現性」というところに、天才の天才である証拠をみる気がするのだ。
今夜の公演もそれはそれはまさに自由だった。


1.PRESTO
2.電話線
3.SOMEDAY
4.DAVID
5.いい子だね
6.愛が足りない
7.塀の上で
8.恋愛宣言
9.いい日旅立ち
10.街
11.椰子の実
12.GREENFIELD

EC1.ひとつだけ
EC2.ごはんができたよ

「いい子だね」のコードのグルーブ感、「いい日旅立ち」のいい意味での破壊感、お約束の「ひとつだけ」、なつかしい「ごはんができたよ」・・など矢野ファンには泣ける選曲だっただろう。
そして何よりも、鎌倉特有のとてもいい聴衆に、すべてがパーフェクトなライブ。まさに一期一会であった。

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デュトワ N響 よこはまみなとみらいホール ラヴェル ピアノコンチェルト

デュトワのラヴェルがききたくて、よこはまのみなとみらいホールをたずねた。

シャルル・デュトワ(指揮)
ピエール=ロラン・エマール(Pf)
NHK交響楽団


ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
ショスタコーヴィッチ:交響曲第8番 ハ短調 作品65

(アンコール)
ピエール・ブーレーズ:12のノタシオン

実は、今回は意外とデュトワ的ではなかった・・というのが率直な感想。ピアノのロラン・エマール氏がやさしくさらっとしたピアノを弾くことも影響していたのだろう。デュトワのこくのある饒舌なラヴェルにはどうしてもならなかったのだ。
以前、ポゴレリッチのときにもデュトワとは相性があわなかったが、それとはまったく別の意味で、今回も相性という意味では、いまひとつだったのだろう。

しかし、それにしてもの収穫は、N響。前回のプレヴィンのときにも思ったが、ぐんぐんうまくなっているというのか、素敵になっている。特に弦・・僕 のこころの中では常にトップはベルリンフィルのあの怒濤のような一体感のある弦だが、それに準ずるくらいのすばらしい出来。また、フランス的ではなかった けれど、打楽器もよかった。

きっと多くの聴衆が、N響をまたききたいと強く思わせられただろう・・その意味でも、とてもここちいいコンサートであったことはまちがいない。

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2010年12月13日月曜日

クールなアメリカン・ロック・ツアー 矢野顕子 さとがえるコンサート at NHKホール

矢野顕子さんのさとがえるコンサート2010最終日を見た。ベース、ドラムス、ギターと矢野さんの4人編成。必要最小限の構成で、アメリカン・ロッ ク・バンドをつくるとこうなるのだ・・という見本のようなバンド。なかでも秀逸なのは、ドラムス。ティンパニをいくつも持ち込んだような重い音色が見事に 矢野さんのピアノと調和し、大人のクールな味わいをみせていた。

さとがえるコンサート2010

矢野顕子(ピアノ・ボーカル)
マーク・リーボウ(ギター)
ジェイ・ベルロウズ(ドラムス)
ジェニファー・コンドス(ベース)


・song for the sun
・season of the end
・the wall
・good girl
・変わるし
・all the bones are white
・ひとつだけ
・恩赦
・naima
・say it ain’t so
・house of desire
・learning / manabeyo
・joy
・ラーメンたべたい
・whole lotta love

・centerpiece
・ふなまち唄


ピアノ弾き語りの「ひとつだけ」は、今日もまた泣けるし、忌野清志郎さんの「恩赦」は格別だった。アンコールの「ふなまち唄」も、ドラムスとの調和がよく、まさに最後を締めくくるには最良の選曲だった。

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2010年12月9日木曜日

宇多田ヒカル Hymne a l’amour ~愛のアンセム~

宇多田ヒカルの横浜アリーナ・コンサートのustream 中継を、今夜、見た人も多かったのではないでしょうか。ustream とはいえ、プロのスイッチング、音質・・そして、そもそも見事なショウイング・・素晴らしいものでした。

先日、発売になったsingle collection もなかなか素敵。その中でも特筆なのはやはり、愛のアンセムでしょう。エディット・ピアフのこの名曲を、ジャジーに宇多田ヒカル的に見事に歌い上げます。
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2 宇多田ヒカル
【Disc 1】 1. Prisoner Of Love フジテレビ系ドラマ「ラスト・フレンズ」主題歌 2. Stay Gold 花王「アジエンス」新CMソング 3. HEART STATION レコード会社直営♪CMソング 4. Kiss & Cry 日清カップヌードルTVCM FREEDOMシリーズ新テーマソング 5. Beautiful World 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」テーマソング 6. Flavor Of Life -Ballad Version- TBS系 金曜ドラマ「花より男子2」イメージソング 7. ぼくはくま NHK みんなのうた 2006年 10月~11月のうた 8. This Is Love 日清カップヌードルFREEDOM キャンペーンテーマソング 9. Keep Tryin’ LISMO! au LISTEN MOBILE SERVICE TVCM タイアップソング 10. Passion ゲームソフト「KINGDOM HEARTS II」テーマソング 11. Be My Last 映画「春の雪」主題歌 12. 誰かの願いが叶うころ 映画「CASSHERN」テーマソング 13. Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix- 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」テーマソング
【Disc 2】 1. 嵐の女神 2. Show Me Love (Not A Dream) 3. Goodbye Happiness 4. Hymne a l’amour ~愛のアンセム~  ペプシネックスCMソング 5. Can’t Wait ‘Til Christmas
そ れにしても、こうして連続してきくと、宇多田ヒカルはなんてうまい歌手なんだろう・・とあらためて実感します。ある意味で、彼女のある種の可能性はこのコ レクションでかなり追求されている感じもして、いま彼女がちょっと休憩をとって人間として充電する・・というのも、何かわかる気もします。この冬いちばん のオススメのアルバムのひとつであることは間違いありません。

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2010年12月6日月曜日

ウイスキーが、お好きでしょ ~ 竹内まりや

武道館の竹内まりやさんのライブはすごかったらしい。行きたかったなあ。なにせ、そのバックバンドときたら、
Dr:小笠原拓海、G:佐橋佳幸、PF&synth:難波弘之、EB:伊藤広規、KB:柴田俊文、Sax:土岐英史、Cho:国分友里恵、佐々木久美、三谷泰広、G,KB&Cho:山下達郎
というのだから、これは、まんま山下達郎ライブですね。暮れの大阪城ホールのライブもきっと盛り上がるのでしょうね。
このマキシCDは、例のウィスキーのCM音楽なのだけれど、「ウイスキーがお好きでしょ」の「イ」のところの声が、竹内まりや節として、ひっくりかえるところがなかなかチャーミングです。
英語版も収録されているのですが、そのオーケストラ・アレンジがさらに新しいアレンジになっていて、とても贅沢な感じを醸し出しています。

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http://wp.me/sMonj-mariya

2010年12月5日日曜日

新世界 清水靖晃 × 渋谷慶一郎

今夜は新装された西麻布の「新世界」で、清水靖晃×渋谷慶一郎のライブ。なつかしい自由劇場の跡地で、見応えのあるパフォーマンスでした。

ここのところ僕自身、風邪をこじらせたようで、久々の点滴治療。ちょっと病み上がりの身体だったのですが、なんとも贅沢な時間を共有できて、ハッピーな時空間の祭典にくらくらな感じの体験でした。
渋谷さんのグルーブ感あふれるテクノな感じに、気持ちよく即興サキソフォンがクロスする・・まるであふれでる電子の雲の中に新しい粒子がとびこんであちらこちらで美しく発光しつづけているような、快感の充填された常に変化しつづける空間がそこに創造され、楽しめます。

そうかと思うと、渋谷さんのリリカルなピアノに、清水さんの見事にコントロールされたサキソフォンの旋律が、研ぎ澄まされた完成度高いハーモニーを組み立てていて、端正な静物画をみるような空間構成もこころを豊かにしてくれる・・。

2部構成だったのですが、あっというまの時間。ライブな「空間場」に、ライブだからこそのパフォーマンスを奏でる清水靖晃さんの姿が神々しくさえあり、そ してまた、最後の1曲、「スターダスト」も何とも圧巻・・最後の最後に奏でられたこのジャズ・スタンダードの、妙になつかしく、耽美な感覚が、20年、い や30年タイムトリップを誘う・・そんな気持ちにさえさせられた贅沢な時間だったのでした。

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