2010年6月25日金曜日

死刑台のエレベーター[完全版]/マイルス・デイヴィス Ascenseur pour l’echafaud Miles Davis [1958]

マイルス・デイヴィスの「死刑台のエレベーター」。サウンドトラックの金字塔でしょう。

この哀しくせつない、彼のサウンドを聴くと、無性にジャンヌ・モローのあの街をひとりさまようにあるく姿が浮かんできます。まさに音楽と映画がひと つになった傑作ですね。

死刑台のエレベーター[完全版]/マイルス・デイヴィス
Ascenseur pour l’echafaud Miles Davis


こちらで一部試聴できます


1. テーマ
2. カララの殺人
3. ドライヴウェイのスリル
4. エレベーターの中のジュリアン
5. シャンゼリゼを歩むフロランス
6. モーテルのディナー
7. ジュリアンの脱出
8. 夜警の見回り
9. プティバックの酒場にて
10. モーテルの写真屋
11. シャンゼリゼの夜(テイク1)
12. 同(テイク2)
13. 同(テイク3)
14. 同(テイク4)
15. 暗殺(テイク1)
16. 同(テイク2)
17. 同(テイク3)
18. モーテル
19. ファイナル(テイク1)
20. 同(テイク2)
21. 同(テイク3)
22. エレベーター
23. 居酒屋(テイク1)
24. 同(テイク2)
25. ドライヴウェイ(テイク1)
26. 同(テイク2)

この音源について、CDデータベースによる解説では、次のように説明しています。

『死刑台のエレベーター』は1957年制作のフランス映画。ルイ・マル監督の出世作であり、主人公のモーリス・ロネとジャ ンヌ・モローが不倫関係の末、殺人を犯すという、いわゆるサスペンス映画。その音楽を担当したのはオリジナル・クインテットを解散した直後のマイルス・デ イヴィス。57年にマイルスは単身渡仏、現地のバルネ・ウィラン、ルネ・ユルトルジュ、ピエール・ミシュロ、ケニー・クラークを含むクインテットでツアー を行い、それが終了後、同じメンバーで映画音楽に取り組んだ。事前に映画に目を通していたマイルスはあらかじめいくつかのメロディの断片を用意、本番では ラッシュ・フィルムを観ながら即興で音楽を完成させていった。そのため映画のサウンドトラックとはいえ、演奏はジャズそのもの。サスペンス映画ということ で、それにあわせた緊張感 あふれる演奏が特徴。本作はオリジナルLPに未収録だった別テイクをすべて追加したコンプリート盤で、映画用に加工される前の生の演奏を聴けるのが魅力 だ。(市川正二)

また、映画そのものの解説をGOOによる映画解説から引用してみると・・

二五歳の仏映画界の新人監督ルイ・マルが、推理作家ノエル・カレフの原作を、自身と新進作家ロジェ・ニミエの共同で脚色、 ニミエが台詞を書いた新感覚スリラー映画。キャメラは新人アンリ・ドカエ。巻頭から巻末までを十曲のモダーン・ジャズで通した音楽はトランペット奏者で作 曲家のマイルス・デイヴィスで『メイン・タイトル』『エレベーターの中のジュリアン』『夜警の巡回』等と名づけられた十曲が演奏される。種々の新しい試み によってこの作品は一九五七年ルイ・デリュック賞を得た。「抵抗(レジスタンス)死刑囚の手記より」に主演したフランソワ・ルテリエが第二助監をつとめて いる。出演者は「宿命」のモーリス・ロネ、「現金に手を出すな」のジャンヌ・モロー、「素直な悪女」のジョルジュ・プージュリー、「親分」のフェリック ス・マルタン、「夜の放蕩者」のリノ・ヴァンチュラ、「悲しみよこんにちは」のエルガ・アンデルセン等。製作イレーネ・ルリシュ。

原作:ノエル・カレフ
脚本:ロジェ・ニミエ、ルイ・マル
監督:ルイ・マル
音楽:マイルス・デイヴィス
撮影:アンリ・ドカエ

ところで、CDのライナーノーツには、ボリス・ヴィアンのことばがでています。引用してみましょう。

レコーディング・セッションは夜のポスト・パリジャン・スタジオで、リラックスした雰囲気の中でとり行われた。この映画で ヒロインを演じたジャンヌ・モローもセッションに顔を出し、スタジオ内に仮設されたバーの方から、ミュージシャン達に向けてにこやかな微笑みを投げかけて いた。プロデューサーやエンジニア達も集まってきた。この映画に対してマイルスがつけ加えようとするものがあれば、それを細大もらさず掬い上げようという 心づもりのルイ・マル監督も、当然のことながら駆けつけていた。すっかりリラックスしたミュージシャン達は、スタジオ内のスクリーンに映画の主要シーンが 映し出されるにつれ、次第に映画の雰囲気に引き込まれて行き、やがてフィルムの進行に合わせてインプロヴィゼーションを繰り出していく。

ところでレコーディングされた中の1曲(モーテルのディナー)では、マイルスのトランペットが不思議な鳴り方をしている。これはマイルスの唇の薄皮 が剥がれ、マウスピースに詰まったのをそのままにしておいたため、このような音になった。たとえば画家の場合だと、人工的な感じを出すため、わざとこの種 の偶然を利用するケースもある。しかし、音楽関係においては前代未聞のこのようなシカケ(文字通り、こんな音楽はいまだかつて耳にしたことがない)をマイ ルスが歓迎する気になったのは、彼の中に画家の場合と同じ効果を期待する心があったからだろう。この偉大なる黒人ミュージシャンと、尊敬すべき彼のチーム メイトによって造形された、聴く人の心を虜にするような、この音楽の悲劇的雰囲気は、たとえ映像から切り離された場合にも、その魔的魅惑を失うことはない だろう。私はそのことを信じて疑わない。[ボリス・ヴィアン 1957年](訳:和田政幸)

ルイ・マルが若干25歳でこの映画を撮ったことが奇跡であるならば、ジャンヌ・モローの美しさも、マイルスの天才的インプロヴィゼーションもすべて が、奇跡の融合であったのでしょう。このイメージの連鎖をこの映画に触れたすべての人が共有している・・その意味でもまさに傑作中の傑作ですね。

ところで、この映画、この秋に日本でリメイクされるとか。果たしてこれだけのイメージがかたまったものを、これだけの才能が凝縮されたものを、どの ようにリメイクできるのか・・どのような勝算があってプロデューサーが挑んだのかわかりませんが、場合によっては、怖れを知らない試みにさえみえる挑 戦・・果たして・・・どうなのでしょう・・・。日本映画のいまの状況の何かがそうさせているのかもしれませんが、新しい映画が仮にどのような傑作であって も、かつてのファンにはなかなか難しい挑戦かもしれません・・・。

つづきはこちら↓

http://wp.me/sMonj-1182

新型ピアニスト登場:ユジャ・ワン/トランスフォーメーション Yuja Wang transformation [2010]

新型のピアニストの登場です。

高度な技術と、音楽への深い洞察力を備えた期待の若手ピアニスト、ユジャ・ワン。難曲ばかりのプログラムは、彼女らしい自信と音楽性のあらわれと言 えるのかもしれません。

ユジャ・ワン/トランスフォーメーション
Yuja Wang transformation


・ストラヴィンスキー:『ペトルーシュカ』からの3楽章
・D.スカルラッティ:ソナタ ニ長調 K.380
・ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35
・D.スカルラッティ:ソナタ ヘ短調 K.466
・ラヴェル:ラ・ヴァルス
ユジャ・ワン(ピアノ)


録音時期:2010年1月26~31日
録音場所:フリードリヒ・エーベルト・ホール、ハンブルク
録音方式:デジタル(セッション)

発売元のユニバーサルによる彼女の紹介によれば・・

【ユジャ・ワン・プロフィール】
北京で1987年に生まれたユジャは6歳からピアノを学び始めた。北京の中央音楽学院でLing Yuanと Zhou Guangrenに師事し、中国、オーストラリア、ドイツで公演を行った。その後、カルガリーで夏に開催されるカナダ・中国芸術文化交流プログラムに3回 参加し、マウント・ロイヤル・カレッジ音楽院でHung Kuan Chen(陈宏宽)と テム・ブラックストーンに師事するためにカルガリーに移る。ユジャが15歳になった2002年にはアスペン音楽祭のコンチェルト・コンペティションで優勝 し、フィラデルフィアに移りカーティス音楽院でゲイリー・グラフマンに師事。2008年にカーティス音楽院卒業。2006年には名門ギルモア・ヤング・ アーティスト賞を受賞している。
2005年にピンカス・ズーカーマン指揮のオタワ・ナショナル・アーツ・センター管弦楽団とメジャー・コンサート・デビューをしてから、カナダ中の記者 が「スター誕生」と彼女に注目し始める。現在までにボルチモア、北京、ボストン、シカゴ、ヒューストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、サンフランシス コ、サンクトペテルブルク、東京やチューリヒといった世界最高峰のオーケストラと共演している。
シャルル・デュトワ、ロリン・マゼール、ロバート・スパーノ、ユーリ・テミルカーノフ、マイケル・ティルソン・トーマス、オスモ・ヴァンスカやデイ ヴィッド・ジンマンといった指揮者たちの下でも演奏している。
2008年春にはアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズとサー・ネヴィル・マリナーと共にアメリカ・ツアーを行う。北米中や海外 の主要都市でリサイタルを行い、室内楽も熱心に演奏する。アスペン、ギルモア、サンタ・フェ室内楽、シュレスヴィヒ=ホルスタイン、ヴェルビエなどの各音 楽祭にも定期的に出演している。
2008/09シーズンにはシャルル・デュトワ 指揮でロサンゼルス・フィルハーモニック、ナショナル交響楽団、ピッツバーグ交響楽団 との初共演が予定されている。またマイケル・ティルソン・トーマス指揮でロンドン交響楽団、クラウディオ・アバド指揮でルツェルン祝祭管弦楽団とのデ ビューも予定。それ以外にもクイーン・エリザベス・ホールでロンドン・リサイタル・デビュー、セントポール、シアトル、パリ、プラハ、ミュンヘン、ベルガ モ(ミケランジェリ音楽祭)などを含む海外都市でのリサイタルも色々と計画されている。(ユニバーサル)

『ニューヨーク・タイムズ紙』によれば、「彼女は、速さ、 柔軟性、ひらめき、繊細なニュアンスといった、すべてを持っているようだ」。まさにピアノ中のピアノ、スタインウェイ的音色が存分に楽しめます。

まずは、アルバム中程にある、パガニーニの主題による変奏。この難曲を難曲と感じさせず、その上、古典的とでも革新的とでもいえる響きで、とにもか くにも音楽的に「聴かせて」くれるのです。そしてそこの表現される音楽性の新しさが何ともいえず、新鮮で愉快なのです。

つづきはこちら↓
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イシュトヴァン・ケルテス ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 新世界よりISTVAN KERTESZ VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA [1961]

ドボルザークの「新世界」といえば、誰の盤を思い出すだろうか。カラヤンか、あるいはいまならば、ショルティ・シカゴ響のあたりが一番メジャーかもしれな い。しかし、僕がやはり一番に思うのは、ケルテッシュの「新世界」だ。

DVORAK

FROM THE NEW WORLD
SYMPHONY NO.5(9) in E minor op.95

ISTVAN KETESZ
VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA

指揮:イシュトヴァン・ケルテッシュ
演奏者:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


ケルテッシュの新世界は、いま聴いても若々しくみずみずしい。アグレッシブでいて、それでいて、この曲のもつる種の土俗性も担保されていて、これほどまで に「新世界」らしい「新世界」は2度と生まれないだろうと思われる・・・そんな気にさせるアルバムである。


webでみつけたSACD盤の解説を引用してみる・・

弱冠32歳の若きケルテスが、名門ウィーン・フィルと共に描き出す、録音史上最もドラマティックな 「新世界」
オリジナル・アナログ・マスターからの究極のDSDマスタリングによって鮮烈に復活。
(前略)

名指揮者ケルテスのデッカ・デビュー盤

イシュトヴァン・ケルテス(1929.8.28-1973.4.16)は、ニキシュにはじまり、フリッチャイ、オーマンディ、セル、ショルティと続 くハンガリー指揮界の栄光を受け継ぐホープとして、1960年代の指揮界を席巻し、アウグスブルク歌劇場音楽総監督(1960-63)、ケルン市立歌劇場 総監督(1964-73)、ロンドン響首席指揮者(1965-68)などを歴任。録音面でも、デッカにウィーン・フィル、ロンドン響、イスラエル・フィル などと数多くの名盤を残したが、1973年、テル・アヴィヴで水泳中に溺死し、その早世を惜しまれた。当アルバムは、ケルテスにとっての名門デッカ・レー ベルへのデビューを飾った記念碑的録音で、特に日本では、1961年にキング・レコードから発売されて以来、ライナー/シカゴ響のRCA盤、バーンスタイ ン/ニューヨーク・フィルのコロンビア盤、セル/クリーヴランドのエピック盤、カラヤン/ベルリ・フィルのDG盤など並んで、「新世界」の定番LPとなっ た。当時32歳という若さのケルテスが、老舗のウィーン・フィルの奥深い響きを生かしつつ、ドラマティックなテンポの変化を加え、ティンパニの壮絶な強打 や金管の咆哮によって、作品に生気をみなぎらせてゆく様は、まるでライヴ演奏を思わせるほどのスリリングな熱気をはらんでいます。ケルテスは、5年後の 1966年に、ロンドン響を指揮してこの交響曲を再録音し、若々しいダイナミズムの代わりに円熟味を獲得した演奏を成し遂げましたが、日本の音楽ファンの 間では断然このウィーン・フィル盤の評価が高いとされています。
デッカ・サウンドを生み出した名ホール、ゾフィエンザールにおける名録音

プロデュースは、デッカでのケルテスの録音の多くを担当したレイ・ミンシャルで、ジェームズ・ブラウンとのコンビで収録に当たっていいます。 1956年か ら1980年代にいたるまで、デッカのウィーンにおけるステレオ・セッションのホームグラウンドとなったゾフィエンザールは、19世紀前半に浴場として建 てられ、その後舞踏会場として使われていた建物で、ヨハン・シュトラウスも頻繁に舞台に立ったことで知られます。この会場は、細部の音まで明晰に収録・再 現しようとするデッカのレコーディング・ポリシーに最適で、伝説的なショルティの《ニーベルングの指環》をはじめとする、デッカ・サウンドの代名詞となっ た名録音が次々と生み出されました。この「新世界」もその1枚で、粒立ちのよいティンパニ、香ばしい輝きを放つ金管、ウィンナ・オーボエやクラリネットな ど個性的な響きを披露する木管、シルキーでしかも厚みのある弦楽パート(特にゴリゴリとした低弦)などをくっきりと立体的に再現し、録音後、ほぼ半世紀を 経た現在も、その鮮明なサウンドの魅力は色あせることがありません。
あらゆる要素を兼備した、一つの理想的な「新世界」(初出LP評より)

「堂々たる構えの大きさと厚みのあるオケの響かせ方は、この曲をシンフォニックにとらえようとした結果だろうが、こうした行き方ではカラヤンなどよ りずっと素晴らしい。それは単に交響曲的な解釈というに止まらず、そこにあらゆる多彩な要素が含まれているからだ。テンポの動きはかなり大きいし、又多い が、それがある場合には強烈に曲を盛り上げ、又ある場合には懐かしい情緒を感じさせながらしみじみと歌うのである。又弦楽器はウィーン・フィルの美点を充 分に生かして、例の優美な憧れのニュアンスを心ゆくまで表現し、反対に金管にはウィーンとは思えぬほどの荒削りな強奏を要求して土俗的な曲の一面を描いて ゆく。 それはティンパニの強打からくる迫力にも表れているのだ。(・・・)実に見事な、あらゆる要素を兼備した、一つの理想的な「新世界」といわざるをえな い」。

ビデオ出力(宇野功芳『LP手帖』1962年より)
(後略)
この引用にもあるが、堂々たる構えの大きさ・・という一語につきるかもしれない。

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http://wp.me/sMonj-1167

2010年6月24日木曜日

まもなく来日~ファジル・サイ(Fazil Say)・プレイズ・ガーシュイン(Gershwin) ラプソディ・イン・ブルー[2000]

今日は、まもなく来日するファジル・サイのガーシュインです。

ファジル・サイ / ガーシュイン
Fazil Say / GERSHWIN


こちらで一部試聴できます


1. I Got Plenty O’Nuttin’
2. Summertime (I)
3. Summertime (II)
4. It Ain’t Necessarily So
5. Rhapsody In Blue
6. Rialto Ripples, Rag
7. Impromptu In Two Keys
8. Merry Andrew
9. Three-Quarter Blues
10. Promenade
11. ‘I Got Rhythm’ Variations
12. Sleepless Night
13. Novelette In Fourths
14. Rubato
15. Prelude I
16. Blue Lullaby
17. Spanish Prelude


KURT MASUR NEW YORK PHIHARMONIC


1曲目の「ボギーとベス」からファジル・サイのアレンジが、ファジル・サイと否応なしにわからせてくれます。これを聴くと、クラシックのピアニストという 範疇ではかるのはやはり難しいという気さえしてしまいます。
もちろん卓抜したテクニックは、クラシックゆずりのものだし、ある種のフォーマットを守る彼の演奏スタイルはクラシックのジャンルに属するもののはずで しょう。だがしかし、彼のこの独特のグルーブ感は、クラシックという呪縛の中ではきっと不自由になってくるだろうし、ひょっとしたら顧客の方もクラシック を期待してくる客には、ちょっとその領域を超えているかもしれないという気もするのです。

それにしても巧いピアニストです。その有り余る技量は、このアルバムの一部始終にもあてはまるのですが、かつて水戸芸術館での体験を思い出しまし た。あれは、2004年の頃、日本に最初か2度目の来日の頃だったかと思います。当時まだ珍しかったYAMAHAのMIDIピアノを用意し、そこでひとり の2回の演奏による4手のトラヴィンスキーの「春の祭典」を演奏したのです。コンサートでは、前日にレコーディングした春の祭典の第二パートをMIDIで 再生しながら、再生している同じピアノの上で第一パートを弾くという離れ技。

ファジル・サイの独特のグルーブ感をもってするならば、もし連弾をするのであれば、かなり相手を選ぶことになりそうで、むしろそれならばということ で自らとの共演による4手を選んだのでしょうが、それはそれは最高のパフォーマンスでした。

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 http://wp.me/pMonj-iG

2010年6月23日水曜日

祝・ゲイリー・バートン来日、最終2夜:ヤマハホール、杉並公会堂の夕べ

ゲイリー・バートン、小曽根真さんの先日のグリーンホールのライヴがとても感動的だったので、銀座ヤマハホール、杉並公会堂と足を運んでしまいました。


ヤマハホールは、今年新装開店、たっぷりと容積をとった高さのあるホール。噂のヤマハピアノのCFXのプロトタイプもあり、小曽根さんが思う存分奏でてい たのが印象的です。このCFX系のピアノ、低音の芯がしっかりしており、また高音も、いわゆるヤマハ的なしっかりしたピアノらしい音を奏でていて、確か に、弾きやすいものなのでしょう。一方、ゲイリー・バートンさんはいつもながら、クールに情熱的に演じます。このヤマハホールでは、残響性能がよいせい か、よりヴィブラフォンの響きが透き通った余韻を残し、まるで、とてもよいタンノイの前で聴いているような感じ、より室内楽的な響きを楽しむことができた 夕べでした。オーナーのヤマハ社長臨席ほか、関係者も多数こられ、また銀座ならではのお客さまに満ちていて、333席が凝縮されたような濃密な会でした。


さて、千秋楽となった、杉並公会堂。地方自治体の公会堂というには、あまりに音質がよく、中規模な演奏会用コンサートホールとしてその定評が知られている ところ。ここでの演奏会は、全体としてとてもウエルトーンにまとまったここちよいバランスの音色が楽しめました。小曽根さんは、YAMAHAピアノをこち らも楽しそうに、楽に弾いている空気が漂っていましたし、ヴィブラフォンも、上手に天井に残響が抜けて、聞きやすい音色が響いていました。この日は、井上 道義さんや、関係者の方も多くこられていたようで、最後は、トロンボーンの中川さんもアンコールにも加わり、楽しく幕を閉じました。

それにしても、このライヴ、どの会も完成度のとても高いもの。ふたりの関係が既に長いこともあるのでしょうが、公演2日目の相模大野と、最終日の杉並公会 堂でも、はじけた感じと濃密な感じという違いはあるものの、どちらも素晴らしい完成度

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http://undecuplet.wordpress.com/2010/06/21/gary-burton-2/

2010年6月18日金曜日

Tokyo Copywriters’ Street Live 4

まもなく、6月26日に、Tokyo Copywriters’ Street Live が開催されます。写真は、そのチケット。57番は、僕の席の番号です。

この催し、既に3回が開催され、今度は第4回となるのですが、毎回いつもわくわくして会場に向かいます。というのも、他に類をみないふしぎな感覚の もので、ジャズやクラシックや、他の生のライヴのどれとも違う、本当に一期一会のようなものだから・・。


TokyoFMの日曜深夜に放送されている番組があって、コピーライターが書き下ろした文章が、そこでは読まれます。日常にあるようでない朗読のような感 覚・・しかも、それが過去のものではなく、現代の現在進行形の空気の中で書かれたものであることが素敵なのです。

最近のものを、紹介すると・・



で、これがライヴになるといい感じの緊張感が生まれるのです。ひとつひとつのフレーズが読まれるとともに、聴衆のそれぞれの頭の中に空想の世界ができあが る・・その、それぞれは、たぶんまったく別のものなのだけれど、でも、空間というか体験を共有した・・いや、夢を共有したようなふしぎな感覚にとらわれ る・・それが、なんとも癖になるいいものなのです。

つづきはこちら↓
http://wp.me/pMonj-ip

2010年6月17日木曜日

夏を思わせるこの時期には・・山下達郎 街物語(まちものがたり)

山下達郎の2010年第2弾シングル。4月14日に発売の「希望という名の光」に続く、音楽活動35周年を迎える2010年の第2弾シ ングルは、4月よりスタートのTBS系ドラマ日曜劇場「新参者」の主題歌。山下達郎が連続ドラマの主題歌を手掛けるのは、フジテレビ系ドラマ「薔薇のない 花屋」の「ずっと一緒さ」以来、約2年振りです。

街物語/山下達郎

1.街物語(まちものがたり)
2.ついておいで(FOLLOW ME ALONG)<’09 LIVE VERSION>
3.街物語(まちものがたり)<original KARAOKE>


曲はというと、なつかしい、歌謡曲調の一曲。Kinkikids に楽曲提供を何曲かしているけれど、そんな感じの曲想という感じでしょうか。ある種の山下達郎節が存分に楽しめます。

しかし、なんといってもいいのは、実はカップリングのライブ曲。土岐さんのソプラノサックスも最高にかっこいいし、山下達郎はライヴにあり(行かれ たことのある方はわかるでしょう・・あの4時間にも及ぼうという壮絶なサービス精神のかたまりのようなライヴ・・ちょっと濃厚なファンの匂いがどこの会場 でもしますが、機会があれば、ぜひ一度は体験されることをおすすめします)というべき空気が伝わってくる、いい出来です。

つづきはこちら↓

http://wp.me/sMonj-1135

2010年6月16日水曜日

ガリアーノの夜 ふたたび ~ ウィントン・マルサリス & リシャール・ガリアーノ ライヴ・イン・マルシアック THE WYNTON MARSALIS & RICHARD GALLIANO

先日のガリアーノのライブがとても印象的だったので、ブルーノート東京の最終日の2ndショウを再びたずねた。初日より活況で、ちょっと業界的な濃度が濃 い観衆。前回とはだいぶソングセットがかわり、大人のmusic lovers よりの選曲。1曲、1曲がより長く、濃厚に、余韻深く演奏された感がある。

アンコールは、フランスのシャンソンナンバー。僕はフランスには行ったことがないのだけれど、フランスのクラブはきっとこんな空気なのだろう、と いった味わいを感じさせる演奏。文句なく素晴らしかった。

帰宅して、ガリアーノさんの最新のCDを聴く。こちらは、ウィントン・マルサリスとの競演のライヴ盤。フランス・マルシアック音楽祭での大勢の熱い 聴衆に囲まれた空気がムンムンとする。実況感あふれるものだ。

THE WYNTON MARSALIS QUINTET & RICHARD GALLIANO
LIVE IN MARCIAC


ウィントン・マルサリス & リシャール・ガリアーノ
ライヴ・イン・マルシアック


01群集 LA FOULE
02ゼム・ ゼア・アイズ THEM THERE EYES
03パタン・パタン PADAM..PADAM
04月光のいたずら WHAT A LITTLE MOONLIGHT CAN DO
05ビリー BILLIE
06月夜の小舟 SAILBOAT IN THE MOONLIGHT
07オートバイの男 L’HOMME A LA MOTO
08奇妙な果実 STRANGE FRUIT
09バラ色の人生 LA VIE EN ROSE

ビリー・ホリデイとエディット・ピアフの名演でお馴染みの名曲、「奇妙な果実」、「バラ色の人生」などが、詩情豊かにきこえてくる。

ガリアーノさんのアルバムでは、ピアソラものが多いことから、マイナーコードの楽曲が多いのだけれど、今回は、朗らかな明るいノリの曲が多く、彼の 違った一面を楽しめる。

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http://wp.me/pMonj-i7

2010年6月15日火曜日

天上から包まれるようなふしぎな唄の感覚~平原綾香( AYAKA HIRAHARA ) my classics 2 [2010]

平原綾香節とでもいうべきなのだろう。息をためこんでいて、いっきにはき出すような唄い方。キーが4分の1くらい本来のメロディーラインより低く、それで いてハスキーな声で奏でられる宙を浮くようなふしぎな感覚。それでいて、ストレスなく確実に唄われる低音。そう、まるで楽器の演奏を聴くような歓びが彼女 の唄にはある。

my classics 2
平原綾香 AYAKA HIRAHARA


こちらで視聴できます


1. セレナーデ (アカペラ) チャイコフスキー / 弦楽セレナーデ
2. Sleepers, Wake! J.S.バッハ / カンタータ第140番
3. 威風堂々 エルガー / 威風堂々
4. my love ヘンデル / 私を泣かせてください
5. JOYFUL, JOYFUL ベートーヴェン / 交響曲第9番「合唱」
6. adagio ラフマニノフ / 交響曲第2番 第3楽章
7. ソルヴェイグの歌 グリーグ / ペール・ギュント組曲より「ソルヴェイグの歌」
8. アランフェス協奏曲~Spain ロドリーゴ / アランフェス協奏曲 第2楽章
9. CARMEN ~Je t’aime!~ ビゼー / カルメンより「ハバネラ」
10. mama’s lullaby ブラームス / 子守唄
11. Ave Maria! ~シューベルト~ シューベルト / アヴェ・マリア
12. ケロパック チャイコフスキー / くるみ割り人形より「トレパック 」
13. Sailing my life with 藤澤ノリマサ ベートーヴェン / ピアノソナタ「悲愴」Bonus Track
14. Love Never Dies アンドリュー・ロイド・ウェバー feat. 平原綾香 Bonus Track A.ロイド・ウェバー / オペラ座の怪人2「Love Never Dies」日本語ヴァージョン

このアルバムは、彼女が掘り起こし、ヒットしたクラッシックの日本語歌曲化アルバムの2枚目。1枚目にひきつづき成功している。ほとんどの歌詞が彼 女自身によるオリジナルのもの。そのあたりも、彼女らしい節回しの自由さに一役かっているのかもしれない。

つづきはこちら↓
http://wp.me/pMonj-i2

2010年6月14日月曜日

The Best Selections of Original Love (オリジナルラブ ベスト)[2010]

田島貴男。ときどき、思い出したように気になる。もう十余年も前のことだろうか。AERAの表紙を飾ったとき、無類の「音楽好き」「音楽バカ」のような表 現があったのを思い出す。

The Best Selections of Original Love
original love

こ ちらで視聴できます


1
ボラーレ!(Nel Blu, Dipinto Di Blu)
2 恋の彗星
3 GOOD MORNING GOOD MORNING
4 Words of Love
5 ジェンダー
6 明日の神話
7 Bird
8 アダルト・オンリー
9 夢を見る人
10 Tender Love
11 プライマル
12 ムーンストーン
13 R&R
14 めくれたオレンジ
15 朝日のあたる道(album mix)
16 接吻 Kiss(Single Version)

一度、渋公のライブにも行った。始まるやいなや、全員総立ち。きがつくと、まわりはうら若き女子ばかり。気づいたばかりにちょっと恥ずかしくなって しまった自分自身の気持ちを思いだした。それでも何か、彼のストイックなまでの音楽へのめりこむ姿、音像が好きだった。

今でも彼の「接吻」をきくと、何か、こころをえぐられるような気持ちになる。こころの裏側をわしづかみされるような感覚。彼の独特の声のトーンが突 き刺さるのだ。

ベスト盤が発売になった。名曲ぞろい。でもやはり、ラストの2曲「朝日のあたる道」「接吻」がいい。
youtubeをみていたら、横山剣とのデュエットをみつけた。
やはり、彼の場合、男同士のデュオが似合う。

つづきはこちら↓
http://wp.me/pMonj-hV

2010年6月13日日曜日

稀代の音楽体験:最高のヴォイス・パフォーマンス~ボビー・マクファーリン ヴォキャブラリーズ( BOBBY MCFERRIN / VOCABULARIES )[2010]

何とも形容のしがたいアルバム・・だけれど、この世で最高のもののひとつでしょう。ヴォイス・パフォーマンスという人間の原点のものでありながら、これほ ど原始的にそれでいて近代的に、音楽的に、すべての要素をとりこんだ熱狂的なものに出会えるとは、この世の幸福のひとつとさえ感じます。

BOBBY MCFERRIN
VOCABULARIES


1. Baby
2. Say Ladeo
3. Wailers
4. Messages
5. The Garden
6. He Ran To The Train
7. Brief Eternity


希有の天賦の才の持ち主、ボビー・マクファーリン・・。日本での評価はいまひとつなのか、かつてライヴにいったときも半分くらい空席でとても残念な思いを したことがありましたが、最近発売になったこのアルバムは、彼のいままでのすべての魅力があたらしい形として結実した見事な作品です。

で、実際の中身なのですが、これが説明するのが難しい。10余名にわたるヴォイス・パフォーマーがくりだす、世界。そのコントロールをしているのが、ボ ビーなのですが、それは、クラシックともジャズともアフリカンとも違うけれども、そのどの要素ももったまったく新しい音楽体験なのです。

つづきはこちら↓
 http://wp.me/pMonj-hP

2010年6月12日土曜日

王道のショパンの極み:ツィメルマン来日公演 よこはまの夜

結局、ツィメルマンをどうしても聴きたくなって、横浜みなとみらいホールに馳せ参じたのでした。当日は、今年の年中行事とでもいうべきショパンプログラ ム。いや、期待に違わずすばらしい、これぞ本物のショパンというべき、素晴らしい演奏でした。

クリスチャン・ツィメルマン
2010.6.11 横浜みなとみらいホール


ノクターン 第5番
ピアノ・ソナタ 第2番 「葬送」
スケルツォ 第2番


バラード 第4番
ピアノ・ソナタ 第3番


ショパンは、軽やかなもの・・というイメージがどこかにあるかもしれませんが、そういった柳のようなショパンを演じるひともあれば、ツィメルマンのように 堂々と構造的に見事に完成された楽曲として提示する人もいます。当日のツィメルマンの演奏はまさに、その見本のようなもの。
なかでも、あの「葬送」が、なんとも見事なパッケージでした。消え入るような弱音から、細やかな運指、それと全体骨格をうたう部分・・・2000人のホー ルのすべての客に、誰にも伝わるような見事なパフォーマンスなのです。ピアノが大きく見えたとでもいえばいいでしょうか。

ツィメルマンだからこそできるのでしょうが、自らのピアノを持ち込み、最良の状態で、最良の音楽を奏でる。その演奏に対する完全主義的な求め方のレ ベルが他のアーティストと比較しようのないほどに、迫力が伝わってくるのです。


そのツィメルマンも、朝日新聞での彼へのインタビューを見ると、来年は休業だとか。

来年は公の演奏活動を休止し、長期休暇をとる。「音楽以外の理由があるが、それは話せない。実は、教会やバーでも弾いてみ たいんだ。ジャズとか」と話 す。

バーゼル周辺に点在する村々の教会を会場に小さなリサイタルを開くことがある。「今、これが弾きたい」と感じた音楽の魅力を聴衆と共有したいとい う。

「大きなコンサートだと、結婚式みたいに計画から本番まで2年もかかる。時間とともに音楽への『恋愛感情』が薄れるのは嫌なんだ」
彼の聴衆への気持ちがとてもわかるとともに、ツィメルマンのがふらりと弾くジャズをぜひきいてみたくなりました。

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2010年6月11日金曜日

祝・来日:ツィマーマン 最上で極上のショパン~4つのバラード・舟歌・幻想曲[1987]

CDがスタートした瞬間、驚きました。なんと端正で、それでいて構造的なピアノなのでしょう。球をころがすような軽やかな右手があったかと思うと、荘厳な 左手のプレイが応酬する。ショパン・バラードの弾き手にとって必要とされるすべてのものが凝縮されているアルバムです。

ショパン 4つのバラード、舟歌、幻想曲
クリスティアン・ツィマーマン KRYSTIAN ZIMERMAN


ショパン:
・バラード第1番ト短調Op.23  Ballade for Piano no 1 in G minor, B 66/Op. 23
・バラード第2番ヘ長調Op.38  Ballade for Piano no 2 in F major/a minor, B 102/Op. 38
・バラード第3番変イ長調Op.47  Ballade for Piano no 3 in A flat major, B 136/Op. 47
・バラード第4番ヘ長調Op.52  Ballade for Piano no 4 in F minor, B 146/Op. 52
・舟歌 嬰ヘ長調Op.60  Barcarolle for Piano in F sharp major, B 158/Op. 60
・幻想曲ヘ短調Op.49  Fantasie for Piano in F minor/A flat major, B 137/Op. 49
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
録音時期:1987年7月
録音場所:ルドルフ・エートカー・ハレ大ホール、ビーレフェルト
録音方式:デジタル(セッション)


なにものにも比較のしようのないほど、完成度の高いアルバムです。この楽曲のアルバムの近代の録音では、きっと名盤ナンバー・ワンにおすひとも多いでしょ う。この1ヶ月ほど、ジャパン・ツアーをしているツィマーマンですが、このアルバムを聴くと、何がなんでも彼の演奏を生で聴いてみたくなる人が多くあるの がとてもわかる気がします。

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2010年6月10日木曜日

カプースチンのサキソフォン・コンチェルト Nikolai Kapustin /  Concerto for alto saxophone and orchestra [2002]

サキソフォンのコンチェルトは、珍しいのですが、以前ご紹介した、スタン・ゲッツとボストン・ポップスのものがなかなか有名です。今回は、あのジャズライ クなクラシック・ピアノ曲を得意とする、ロシアの作曲家カプースチンによるもの。


ニコライ・カプースチン Nikolai Kapustin
アルト・サキソフォンと管弦楽のための協奏曲
Concerto for alto saxophone and orchestra op.50(1987)

アンドレイ・エシュパイ Andrei Eshpai
ソプラノ・サキソフォンと管弦楽のための協奏曲
Concerto for soprano saxophone and orchestra

アレクセイ・ヴォルコフ(アルト・サキソフォン、ソプラノ・サキソフォン)Alexey Vlkov

マルク・ゴレンシテイン(指揮) Mark Gorenstein
オーケストラ<ニューロシア> Orcestra “NEW Russia”


このCDのライナーノーツに、カプースチンがこのアルバムに寄せたコメントが載っているので少し紹介してみましょう。

この曲に献呈先など存在しません。私に対して、ペレストロイカまっただ中の1980年代終わりに作品を委嘱してくれる人は おらず、ソリストの人選などは考えてもいなかったからです。今では作曲の動機も思い出せませんが、想像するに、それまで私が書いた3曲のコンチェルトは全 てピアノ協奏曲だったので、何か他の楽器を取り上げてみたかったのだと思います。少し前にエシュパイのソプラノ・サックスのための協奏曲が発表されたばか りで、それが密かな助言のように作用したのかもしれません。

私は単一楽章のコンチェルトを4曲書いており、これはその2作目にあたります。後に私は、この形式への興味を失ってしまいました。サクソフォン協奏 曲の筆を進めている間にも形式的な限界を感じ、それゆえ作品は短めのものとなりました。スタイルは、それほどジャズ的ではなく、どちらかというとジャズ= ロック的です(ソリストには、ジャズメンの資質が不可欠)。オーケストラの編成にはビッグバンドが含まれますが、独奏楽器の音色が全パートをバックに抱え ても明確に浮き立つよう配慮されています。

(後略)

演奏も、ロシア人のソリストによるサキソフォンといい、オーケストラといい、とても端正で、いかにもクラシックに演奏されているジャズという感じで す。中盤からは、ちょっとバーンスタインを思わせる雰囲気やら、劇伴風の香りも漂わせつつ、しかしあくまで、ジャズ的なグルーブ感には走らず、淡々と楽曲 が進行していくところが、やはりロシア的なのでしょう。カプースチンによれば、これでもかなりジャズ的なのだというのですが・・。もちろん過日のボスト ン・ポップスがこの曲を奏でれば、もっとグルーブに走り、最後はアップテンポで終わっていた気がします。

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2010年6月9日水曜日

バッハからピアソラまで:ガリアーノの夜( Bach, Piazzolla ~ Richard Galliano at BlueNote TOKYO )

アコーディオン奏者、リシャール・ガリアーノの来日ライブをブルーノート東京で聴きました。前回僕が聴いたのは、紀尾井ホールだったからもう3年ぶりになるでしょうか。そ こには、ミュージック・ラバーとして天賦の才を受けたアーティスト、ガリアーノの変わらぬ姿がありました。

今回のユニットは、ギター、ベースとのトリオ。ガリアーノさんの演奏は、常に、自らを探り出すように深く深く音楽はいろどりをます。それでいなが ら、演奏が終わると常にとてもやさしい笑顔。そのほほえみに、音楽の緊張を解かれた気持ちよい弛緩が広がり、聴衆すべてが、ほっと一息つきながら音楽への 愛を共にすることになるのです。

それにしても、彼のアコーディオンは、本当に息をしているよう。それが明らかになるのが、ピアニカのように鍵盤がついた吹奏楽器アコーディナの演 奏。息つぎの感覚が本当に音楽そのものの歓びのグルーブであり、いわば歌そのものなのです。


バッハの無伴奏ソナタも、ピアソラのメロディーの数々も、どちらも、自らが人間の本心に帰って、自然と泣きたくなってしまうような、自然な感動に満ちてい て、このような音楽をつむぎだすひとは、本当に、いわゆる HEAVEN’S GIFT を受けた人なのだろう、とあらためて感じました。

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2010年6月8日火曜日

流麗で華麗なテクニックの極み~ギンジンのラ・ヴァルス(Maurice Ravel: La Valse – piano works Alexander Gindin )[2000]

実に端正で、軽やかなピアノタッチを自由に操るギンジン。彼のラヴェルのアルバムです。なかなか素敵な選曲で、「優雅で感傷的なワルツ」からはじま り、「夜のガスパール」「ソナチネ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」、そして、「ラ・ヴァルス」。ラヴェル好きにはたまらないラインナップでしょう。

ラ・ヴァルス ラヴェル作品集(Maurice Ravel)
アレクサンドル・ギンジン(Alexander Gindin)

1. 高雅で感傷的なワルツ Valses nobles et sentimatales
2. 夜のガスパール Gaspard de La Nuit
1.オンディーヌ
2.絞首台
3.スカルボ
3. ソナチネ Sonatine
4. 亡き女王のためのパヴァーヌ Pavane pour une infante Defunte
5. ラ・ヴァルス(ピアノ独奏版) La Valse

アレクサンドル・ギンジンは1977年モスクワ生まれ。今回のこのラヴェルは2000年11月に那須野ヶ原ハーモニーホールでレコーディングされた もの。響きのたっぷりとした、ヴォリュームあるオリジナリティあふれるラヴェル。とてもチャーミングです。

「高雅で感傷的なワルツ」は、ちょっと、テンポが遅めだけれど、確実なテクニックから伝わる真摯な感じがとてもギンジンらしい。そして、「ラ・ヴァ ルス」はあえてラヴェルのピアノ・ソロ版を使わず、ギンジン自身の編曲によるもの。ギンジンらしく、ちょっと華麗で美しい響きの「ラ・ヴァルス」アレンジ になっています。この曲は、演奏者によって、本当にまったく別物へと豹変するもの。今回の演奏は、ギンジンの確実なピアノさばきと巧みさによって、ちょっ と毒気は少ないけれど、流麗で優雅な「ラ・ヴァルス」を楽しめます。

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2010年6月7日月曜日

天賦の才、ゲイリー・バートン(Gary Burton)と小曽根真(Makoto Ozone)の至極のデュオ、来日ライヴ。

ゲイリー・バートンさんの第一音が聞こえた瞬間から、もうまったくの別世界。天賦の才により悦楽の別世界へと導かれた感じです。久々に聴くデュオでの彼ら の音色に、かつての記憶の中に音でなかったらどうしようという不安はふっとび、さらに前進し、かつ抑制のきいた音楽世界を堪能します。

弾きなれないだろうホールのスタンウエイ・ピアノと、わずか3オクターブのビブラフォンから奏でられるものとは思えないほどの広がりのある音楽世界 が、現実のものとしてそこに存在することを真実ととらえ、驚愕をもって幸福を感じながらそこに身をおく自分を感じます。

Makoto Ozone & Gary Burton
in GreenHall Sagamiohno


Mongo Santamaria : Afro Blue
Milt Jackson : Bag’s Groove
Chick Corea : Bud Powell
Makoto Ozone : I need you here
Makoto Ozone : Crystal Love

Domenico Scarlatti : Sonata No.20
Maurice Ravel : Prelude from “Le Tombeau de Couperin”
George Gershwin : Piano Concerto in F 3rd Mov.
Astor Piazzolla : Laura’s Dream
Makoto Ozone : Kato’s Revenge


ライヴは2部構成。特に、後半のラインナップは聴きたかったものすべてが凝縮されていて、聞き逃せない曲の数々。
アルバム「VIRTOUSI」から、スカルラッティのソナタ、ラヴェルのクープランの墓、ガーシュインのピアノコンチェルト in Fとつづき、聴きたかったピアソラ、そして昨日のこの欄でも紹介したface to face のアルバムからもっとも印象的な曲、KATO’s REVENGE。

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2010年6月6日日曜日

まもなく来日~ゲイリー・バートン & 小曽根真:face to face / gary burton & makoto ozone [1994]

ゲイリー・バートンさんと小曽根真さんのデュオアルバム。このアルバムの録音された1994年当時、ブルー・ノート・東京は、まだ移転前で、手狭な小屋 だったけれど、アーティストと観衆との近さが、いい密集度感になっていました。そこではじめて、ふたりの演奏をみたときの新鮮な感動を、つい最近のことの ように思い出します。

face to facegary
burton & makoto ozone

1. Kato’s Revenge
2. Monk’s Dream
3. For Heaven’s Sake
4. Bento Box
5. Blue Monk
6. O Grande Amor
7. Laura’s Dream
8. Opus Half
9. My Romance
10. Times Like These
11. Eiderdown


このふたりについては、以前にも書いているので、あらためて記すこともないかもしれませんが、ヴィブラフォンの名手、ゲイリー・バートンの軽やかなばちさ ばきが、小曽根さんの切れ味のよいピアノとよい感じでミクスチャーされ、チック・コリアさんとのデュオとはまた違った、楽しい演奏を聴かせてくれます。

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2010年6月5日土曜日

幸せであるように:FLYING KIDS

かつての「イカ天」での、イカ天キング曲「幸せであるように」。浜崎貴司のボーカルがとてもせつなくてよかったものです。このアルバムは、フライングキッ ズのデビュー・アルバム。同じく「イカ天」での名曲「あれの歌」も含まれています。

続いてゆくのかな
FLYING KIDS

1. あれの歌
2. キャンプファイヤー
3. 行け行けじゅんちゃん
4. ちゅるちゅるベイビー
5. ぼくはぼくを信じて~満ち足りた男
6. 我想うゆえに我あり
7. 幸せであるように
8. きのうの世界
9. 君が昔愛した人
10. おやすみなさい
11. あれの歌(再び)

WIKIでFLYING KIDSをみてみると・・

FLYING KIDS(フライングキッズ)は、ボーカル浜崎貴司を中心とした日本の7人組のファンクバンドである。東京造形大学の学生などで結成された。

バンド名「FLYING KIDS」は山下達郎の同名の曲「フライング・キッド」(大滝詠一・山下達郎・伊藤銀次によるアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」収録)に由来する。

FLYING KIDSは1989年3月 4日TBSのバンドオーディション番組「平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国」に出場、キングであったGENを倒して3代目イカ天キングとなる。

その後、4週連続勝ち抜き、4月 8日放送分ではワールド・ミュージック風の楽曲を引っさげて挑んできたチャレンジャーのKUSU KUSU(楽曲は「オレンヂバナナ」)を倒して5週勝ち抜き達成、初代グランドキングとなり、シングル「幸せであるように」でメジャーデビュー。

初期にはファンクミュージックを前面に出した曲を中心に、1994年頃からは「恋の瞬間」「風の吹き抜ける場所へ」「とまどいの時をこえて」等ポッ プ路線を取り入れていった。その後も「暗闇でキッス~Kiss in the darkness~」「ディスカバリー」などのスマッシュヒットを連発。

1998 年2月12日に解散。浜崎はその後もソロとして音楽活動。 丸山は自分のバンド「マルサンズ」を結成、都内ライブハウスを中心に活動。また、サポート活動では高橋直純のツアーでベースもプレイしている。 飯野は藤井尚之、中島卓偉、アブラーズ、杏子などのライブサポートを中心にCMやTV番組音楽の制作などでも活動、自主的なソロアルバムも発表している。

2007 年8月18日、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO(2007/08/18)』で浜谷淳子を除くオリジナルメンバー6人で再結成。

ところで、浜崎貴司が独立し、その後、MCUとのコラボの「幸せであるように」も発売されて、これも音楽的にはとても良かった記憶があ ります。

ところで、ジャヴァンのSAMURAIも同じ曲のようにいつも聞こえるのだけれど、どちらが本家なのでしょう。

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http://bit.ly/ctnE9t

2010年6月4日金曜日

パーフェクト・ショパン・ライヴ~ダン・タイ・ソンの夜(chopin dang thai son)

今夜は待ちに待った、ダン・タイ・ソンのコンサート。紀尾井ホール。お客さまの平均年齢はちょっと高めだけれど、いつものように上品な方々でホールは満 席。颯爽と登場したダン・タイ・ソンは、いつものごとく無表情にクールに弾き始めた。

ショパン・ダンス
ダン・タイ・ソン


8つのワルツ
・ホ長調 (遺作)
・イ短調 op.34-2(華麗なる大円舞曲)
・ヘ長調 op.34-3(華麗なる大円舞曲)
・変ニ長調 op.70-3(遺作)
・変イ長調 op.42(大円舞曲)
・嬰ハ短調 op.64-2
・変ト長調 op.70-1(遺作)
・変イ長調 op.34-1(華麗なる大円舞曲)


ボレロ ハ長調 op.19

タランテラ 変イ長調 op.43

(休憩)


ポロネーズ第七番変イ長調 op.61
(幻想ポロネーズ)


6つのマズルカ
・ト長調 op.50-1
・変イ長調 op.50-2
・嬰ハ短調 op.50-3
・ロ長調 op.63-1
・ヘ短調 op.63-2
・嬰ハ短調 op.63-3


ポロネーズ第六番 変イ長調 op.53
(英雄)


(アンコール)
ショパン:マズルカ イ短調 op.17-4


ダン・タイ・ソンのピアノ・プレイはもはや完璧なのだと思う。繊細で確実なストローク、タッチ、音量、リズム・・そのすべてが狂いもないかのごとく、無表 情に、しかし自信たっぷりに奏でる。

そこからでてくる音は、演奏者が予期したとおりの音であり、そこに、演奏家と演奏曲との完璧な関係がみてとれるのだ。気持ちいい。
その中でも圧巻は、最後の英雄ポロネーズだろう。それまでの、端正な弾きっぷりとはうってかわって、大音量のたたきつけるような、ポロネーズ。途中 ミスタッチのようなものがあり、やや前半苦戦気味だったが、それでも後半もりかえすと、強い左手のリズムのもとに、おそいかかるような演奏。これは、これ で、彼の中を自由奔放にめぐる何かを表出させたような、それまでの抑制のきいたショパンとはまったく別物のようなショパン。そして、そのどちらもが、ダ ン・タイ・ソン的で、とてもチャーミングなのだ。

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http://bit.ly/d1heHq

2010年6月3日木曜日

上を向いて歩こう~近藤房之介:complete of FUSANOSUKE KONDO

ふしぎなアルバムである。近藤房之介のまさに、ブルースのアルバム。彼の個性を存分に楽しめる。

近藤房之介
complete of FUSANOSUKE KONDO

1. TAKE ME TO THE RIVER
2. TRAVELLING
3. Same Ol’ Blues
4. 青い影~A WHITER SHADE OF PALE~
5. Cross Road Blues
6. 電話
7. SUKIYAKI~上を向いて歩こう~
8. DON’T LET ME BE LONELY TONIGHT
9. Stand By Me
10. DEPRESSING NIGHT(DJ ME-YA REMIX)
11. Good-by morning(Slow Version)(宇徳敬子&近藤房之助)
12. 白いブランコでおやすみ(高田純次&近藤房之助)
13. BOMBER GIRL(近藤房之助&織田哲朗)


ライブほか、さまざまなものが入り交じっているが、そのどれもに近藤房之介さんの個性がいきている。近藤房之介のシンガーとしての魅力が、こころとこころ をつなぐように伝わってくる。まわりのバンドがいつもとてもうまい。そして、アルバムとして見事な編集である。

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2010年6月2日水曜日

まもなく来日 ダン・タイ・ソンの比類なきラヴェル~亡き王女のためのパヴァーヌ[ PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE DANG THAI SON (1995)]

ダン・タイ・ソンのラヴェルは、究極のラヴェルでしょう。それは、繊細さとオリジナリティとともに共存させるという意味において、他に類をみないという意 味でもあります。2008年10月に、来日し、紀尾井ホールで演奏したとき、そこで演奏されたラ・ヴァルスは、まさに極上の体験でした。

素晴らしく真にラヴェル的でありながら、かつてまったくきいたことのないラヴェル。あまりに完璧な技巧、繊細な構成、それでいてオリジナルな解釈で あり、縦横無尽なスピードの展開は、体中が震え、発汗するのが自覚できるほどの興奮を与えてくれるものでした。そして、もちろんラヴェルのラ・ヴァルスで あり、こころ踊る躍動感あふれるラ・ヴァルスなのです。

亡き王女のためのパヴァーヌ
ダン・タイ・ソン


1. 鏡 MIROIRS
2. 優雅にして感傷的なワルツ VALSES NOBLES ET SENTIMENTALES
3. ソナチネ SONATINE
4. 亡き王女のためのパヴァーヌ PAVANE POUR UNE IXFANTE DEFUNTE


アルバムの伊藤よし子さんによるライナー・ノーツが、僕が感じたこのあたりの空気と同じことをまさに伝えているので、ここに引用してみましょう。

ダン・タイ・ソンはずいぶん前からラヴェルを弾きたい、ラヴェルに魅せられているんだといいつづけてきた。ラヴェルの音楽 のなかにあるイマジネーションとファンタジーに引きつけられるんだと。ラヴェルを弾き始めたころは、まずそのきらびやかで美しい音の色彩感に心が動かされ たというが、弾きこんでいくうちにもっと深いもの、各々の作品のなかに隠れているこまやかな感情に引きつけられるようになったという。

「ラヴェルの場合、感情が前面にこれでもかというように押しつけがましくでてこない。まるで薄いヴェールに包まれているような感じを受けます。その 奥に何かがあるような、ミステリアスな雰囲気をもっている。ですから、ラヴェルを弾いているといつも新しい発見があり、未知の美しい響きに遭遇できて、な んだかワクワクしてくるんです」

ダン・タイ・ソンのピアノの音色は美しい。それはショパンを弾いても、他の作曲家の作品を弾いても厳然として存在している彼の強烈な個性だ。この美 音が、ラヴェルで一気に開花した。ここに聴くラヴェルは、透明なクリスタルのような純粋な美しさをもって聴き手の心に迫ってくる。きらきらと輝き、どの方 向から見ても美しいのだが、その美しさはどこかひそやかで無垢な麗しさを秘めている。

素顔のダン・タイ・ソンはとてもこまやかな神経の持ち主だが、それが音楽にも現れ、このラヴェルは実に緻密である。全体の構成、各フレーズ、こまや かなリズム、打鍵にいたるまで、すみずみまで神経が行き届いている。

ダン・タイ・ソンはロシアの地から出て初めてパリを訪れたとき、ポリーニの演奏を聴いて言葉では表現できないほどの感銘を受けたという。そのときか ら彼は緻密な演奏を心がけ、音に主張をもつことをモットーとしてきた。それに加え、最近のダン・タイ・ソンの演奏は自信に満ちている。以前のやさしさに、 ある種の強さがプラスされたようだ。さまざまな国に移り住み、決して平坦ではない人生を送ったことが、彼の音楽を骨太にしたのだろうか。

まさに、ダン・タイ・ソンが語る心情は、演奏を聴くと伝わってくるものそのものです。ところで、このアルバムは1995年のもの。それでも、彼のラ ヴェル愛は、演奏された音楽に深く刻まれています。この頃は、まだオーソドックスに端正な演奏ですが、特に、「道化師の朝の歌」や、「優雅にして感傷的な ワルツ」などでは、ダン・タイ・ソンならではの優美さがひかります。

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2010年6月1日火曜日

パリの味わいあふれる極上のデュオ、エディ・ルイス&リシャール・ガリアーノ:フェィス・トゥ・フェイス  EDDY LOUISS RICHARD GALLIANO FACE TO FACE (2002)

このデュオをなんと評したらいいかわかない。それは、あまりにデュエットとして気持ちの良い仕上がりの、このアルバムを前にすると、ふたりの異同について 何をどんなに語っても意味がないと思われるからだ。


FACE TO FACE
EDDY LOUISS RICHARD GALLIANO

1. サン・マル Sang Mele
2. フェイス・トゥ・フェイス Face To Face
3. トリビュート・トゥ・ジョ・ディオリオ Tribute To Joe Diorio
4. ベイジャ・フロー Beija-Flor
5. アイ・リメンバー・クリフォード I Remember Clifford
6. アンラス Enlaces
7. ラウリータ Laurita
8. ビンリンバウ/セルマオ Berimbau/Sermao
9. アマンディーヌ Amandine
10. フランボワーズ Framboise
11. パリの空の下 Sous Le Ciel De Paris
12. アズール・タンゴ Azul Tango
13. アヴェック・ル・タン Avec Le Temps

アコーディオンとハモンド・オルガン。それもフレンチ・ジャズの第一人者同士の共演である。じつはありそうで珍しい、この二つの楽器のデュオ作。 まったく異なるふたりだが、グルーブ感の感覚が共通というか、ともに息を同じくしている感じだ。エディ・ルイスは、故人となってしまったピアニスト・ペト ルチアーニとのデュオ・アルバムで有名だが、それとはまた異なった持ち味だけれど、やはり、フランスのエスプリがきいたとでもいうべき、いい味わいがこの ふたりにはある。

ハモンド・オルガン、アコーディオンともに鍵盤楽器であり、それでいて全然音色は違うけれど、ともに息をする楽器というか、息つぎのような感覚があ る楽器。だからだろうが、この息のあいかたが、とてもいいデュオなのだ。

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http://bit.ly/bTelFh